Big Five理論
パーソナリティ特性を「外向性」「協調性」「勤勉性」「神経症的傾向」「開放性」の5つに分類してあらわしたものです。
この理論はアメリカの心理学者ルイス・R・ゴールドバーグによって提唱され、現在の心理学でも多くの研究に使用されています。
ここでは、Big Five理論に関して、知っておくべき以下の項目について解説します。
目次
ビッグファイブの5つの特性について
外向性(Extraversion)
積極性、社交性、エネルギッシュな行動を示す特徴です。
高い場合は、活動的で社交的で、ポジティブな感情を持ちやすいでしょう。
低い場合は、内向的で静かな環境を好む傾向にあり、自分の行動や言動を振り返ってよかったのか悪かったのかを考え反省することがあります。
協調性(Agreeableness)
他者への共感性や協力性、信頼性を示す特徴です。
高い場合は、思いやりがあり、チームプレイが得意です。
低い場合は、批判的、競争的な面があり、自己中心的な行動する傾向があります。一方で、高い成果を追求する、独立した考えを持ち他者の意見に左右されにくいなど時によって有利に働きます。
誠実性(Conscientiousness)
自身を制御することができ、計画性や責任感を示す特徴です。
高い場合は、目標志向が強く、信頼されます。
低い場合は、計画性に欠けて、衝動的な行動をとります。一方で臨機応変な対応が得意なこともあります。
神経症傾向(Neuroticism)
感情の安定性やストレスに対する反応を示す特徴です。
高い場合は、不安やストレスに対して敏感で、感情的になりやすいです。
低い場合は、冷静で安定しており、ストレス耐性が高い傾向があります。
開放性(Openness to Experience)
知性と表現されることもあります。新しい経験やアイデアへの興味、想像力などを示す特徴です。
高い場合は、知的好奇心が強く、柔軟な思考ができます。
低い場合は、現実的で保守的であり、安定性を好む傾向があります。
それぞれの特性について、どれが高いと良い悪いということではありません。自己理解を深めて、どういう場面であれば役に立つのかなどを考えてみることも大切です。
また、他者と結果を比較して、自己評価を下げることは避けましょう。あくまで自身を理解することが大切です。
ビッグファイブ理論に基づいた評価ツールのご紹介
パーソナリティの診断テストは血液型診断や様々ありますが、ビッグファイブ理論に基づいたパーソナリティ診断は、その妥当性や信頼性などを検証されたものがいくつかあります。ここでは代表的な診断について紹介します。
- NEO-PI 診断
開発の経緯:
ポール・T・コスタ、ロバート・R・マクレーによって、NEO Personality Inventory(NEO-PI)として1985年に作成されました。その後改良され、1992年にNEO-PI-Rとして改定されたものが現在使われているものです。日本語版は1998年に下仲氏らによって作成されています。
項目数:
NEO-PI-Rは240項目、回答時間は30~40分かかりますが、その短縮版としてNEO-FFIがあり60項目、回答時間は10分程度となっており、企業などでは短縮版が使われることが多くなっています。
内容:
NEO-PI-Rでは、ビッグファイブの5つの次元だけでなく、各特性別にさらに細かい6つの下位次元がわかるテストになっています。青年から老齢まで年齢の幅が広く使用できるとされています。尺度の妥当性・信頼性が高いとされており、研究などでよく使われていますが、有料で提供されています。
【5つの次元とそれぞれの下位次元】
神経症傾向・・・不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ
外向性・・・温かさ、群居性、断行性、活動性、刺激希求性、よい感情
開放性・・・空想、審美性、感情、行為、アイデア、価値
調和性・・・信頼、実直さ、利他性、応諾、慎み深さ、優しさ
誠実性・・・コンピテンス、秩序、良心性、達成追求、自己鍛錬、慎重さ
- BFI-2(Big Five Inventory-2)
開発の経緯:
オリバーーP.ジョン氏らによって開発されたBFIを改良してできたテストで、
より詳細な性格特性を測定できるように改良されました。
日本版は吉野氏らによって開発されました。項目数:
BFIは44項目、BFI-2は60項目とより詳しく測定できるように設計されています。教育現場や職場など幅広い場面で活用されています。内容:
BFI-2では5次元の性格特性に加えて各3つの下位特性を知ることができます。
また、BFI-2は異なる文化や言語に対応するために国際的な翻訳・検証が行われており、日本語版についても文化背景に応じた測定ができるようになっています。【BFI-2の5つの次元とそれぞれの下位次元】
否定的情動性・・・不安,抑うつ,情緒不安定性
外向性・・・社交性,自己主張性,活力
開放性・・・知的好奇心,美的感性,創造的想像力
協調性・・・思いやり,敬意,信用
勤勉性・・・秩序,生産性,責任感
- BFS(Big Five Scales)
開発の経緯:
和田さゆり氏が1996年に開発した性格特性用語を用いたBig Five尺度です。
Adjective Check List(ACL、Harrison G. Gough and Alfred B. Heilbrun, Jr.により作成)という心理的特性を識別するための形容詞(例えば、話好き、地味な、好奇心が強いなど)を用いて、ビッグファイブの因子構造を抽出して開発されました。項目数:
60項目の性格特性用語を用い、7段階のリッカート尺度で回答します。内容:
性格特性用語を用いているため、文章形式の診断よりも回答が容易であり幅広い年齢層に使用されやすく、安定して因子構造が抽出されるという特徴があります。一方で、性格特性用語が使用されるために意味があいまいに捉えられてしまうのではないかという指摘もあります。
- TIPI-J(Ten Item Personality Inventory)
開発の経緯:
2012年に小塩氏が日本語版を開発しました。項目数:
10項目、7段階のリッカート尺度で回答します。5つの性格特性についてそれぞれ2項目ずつで測定しています。内容:
5つの性格特性について短時間で測定することができます。再検査法による信頼性の確認や、他の性格特性検査と比較した妥当性テストも行われていますが、より正しく測定をするにはより項目数が多い検査が良いと考えられます。
実社会での応用
性格特性に関する研究の中では、古くから研究されているBig Five理論ですが、実社会の様々な場面で活用されています。
場面1 採用・人材管理
候補者の職種配置に活用される事例があります。例えば、外向性が高い人であれば、営業職やプロジェクトリーダーなどといった具合です。すでに在籍している人材についても、どの部署にどういうタイプの人が多いか把握することで人事異動などに活用されています。また、同じ部署内にどのような性格特性を持つ人がいるのかを把握することで、どのような業務が得意かを把握し、仕事の振り分けの参考にできます。
場面2 教育・キャリアカウンセリング
就職活動の際のサポートとして、キャリアカウンセリングの際に活用される事例があります。どのような性格特性があるかによって、適切な職業選択ができるようにサポートする為に使われます。
場面3 心理療法・心理カウンセリング
より効果的な治療計画を立てるために、患者の性格特性を把握する必要がある時に活用されます。また、患者にとっては自身の性格特性を理解することが自身の症状改善に役立つこともあります。